TEAM APPROACH
患者さんのニーズや医療の進歩による多様化、
高齢化した社会で医療現場では“チーム医療”の重要性がますます高まっています。
“チーム医療”とは、一人の患者さんに対してさまざまなスキルを持つ医療スタッフが連携し、協働しながら取り組むことです。それぞれの医療スタッフが相互に各分野の専門技能を理解すること、すなわち多職種の理解が大切です。また、多職種とコミュニケーションを取りながら、意思決定をしていく力も求められます。
人の身体は単なるパーツの集合体ではありません。気持ちが落ち込むと身体の機能が低下したり、心が生き生きしていると健康的に過ごしたりすることができます。このように、身体と心は繋がっているため「病んでいる部分」だけではなく、心理面や社会的側面も含めた「その人全体」をケアしなければなりません。患者さん個々に合った医療を提供するためには、医療専門職間のチームワークが必要となるのです。
患者さんの多様な医療ニーズに対応するため、病院だけではなく在宅での医療も重要になっています。特に、超高齢社会(65歳以上の高齢者が人口の21%以上を占める社会)では、病院内だけではなく介護・高齢者福祉と医療の連携、情報の共有化も求められます。
医療技術は日々進歩を続けているため、高度な専門性が求められています。一方で、患者さんを取り巻く環境も変化し、医療職の業務は増加かつ複雑化が進んでいます。医療スタッフが連携し専門性を発揮することで、患者さんのニーズに対応した的確な治療を行えます。
急性期とは発症直後の症状が急激に現れている時期のことで、手術や投薬など積極的な治療が行われます。
62歳 男性
激しい呼吸困難で病院に運ばれ、検査の結果、心臓弁膜症と診断される。
弁を入れ替える手術が必要なため入院となった。
激しい呼吸困難は生命の危機状態にあるケースが多いため、早急な原因検索・治療が必要です。臨床検査技師が血液検査・超音波検査・心電図、診療放射線技師がX線撮影・CT検査・MRIなどの画像検査を実施。その結果に基づき、医師が疾患の診断や治療・手術の方針を総合的に判断します。心臓弁膜症では血液の逆流を防ぐ弁に障害が起きているため、弁を入れ替える手術を行います。手術は心臓を止めた状態で行う外科的治療や心臓を止めることなくカテーテルを用いた治療が選択されます。外科的治療では臨床工学技士が人工心肺装置を操作・管理します。また、カテーテル治療では医師、看護師、臨床検査技師、診療放射線技師、臨床工学技士が専門性を活かしながら協力し、手術にあたります。さらに看護師は術前の患者さんへの説明や手術の補助、術後の経過観察のためのバイタルチェック※を行います。
※バイタルチェックとは:バイタルサインと呼ばれる心拍数・呼吸・血圧・体温の4項目を計測すること。
維持期とは急性期治療が終わり、退院に向けてADL(日常生活動作)向上を図る時期のことです。
69歳 女性
脳梗塞で治療を行うも右半身に麻痺が残る。自立した生活を希望しており、
リハビリテーションをしながら退院をめざす。
維持期の患者さんでは、病気発症前の日常生活への復帰をめざし、ADL(日常生活動作)向上のためのケアが必要です。各医療職がカンファレンス※を行い、総合実施計画書を作成。患者さんの精神面や身体面をケアする看護師と情報共有を図りながら、起き上がりや歩行などをめざしたリハビリテーションは理学療法士が、生活するうえで必要な細かい動作訓練は作業療法士が担当します。変化があれば医師にフィードバックして新方針を考えます。
※カンファレンスとは:医療の専門職が各分野の枠を越え、1人の患者さんへの支援方法を話し合うこと。
在宅とは病院を退院して自宅療養をしている状態のこと。住み慣れた場所で患者さんの求める療養生活を送れるよう、医療者が患者さんの自宅を定期的に訪問し支援します。
84歳 女性
大腿骨骨折で入院するが体力的に手術は不可能。認知機能にも低下がみられている。
自宅療養を希望され、退院後は訪問看護を実施している。
在宅で療養する患者さんの「したいこと」を実現するために、QOL(生活の質)向上をめざしたケアが必要です。看護師や臨床検査技師が定期的に訪問し、医師とともに全身機能を見守ります。さらに、患者さんが豊かな時間を過ごせるように、作業療法士が要望に応じた動作の訓練や、居心地の良い家具の配置を行います。また、鍼灸師が痛みの緩和など心身のケアを行います。