作業療法学科について
“その人らしい生き方”を支える作業療法士へ
作業療法士とは
身体や心に障がいがある人の機能回復や維持を目的にリハビリテーションを行うスペシャリスト。乳児からお年寄りまで、あらゆる世代が対象です。患者さんの日常生活における作業(食事・更衣・排泄・移動・入浴・遊び・学習・余暇活動など)を通して、身体と心のリハビリテーションを行います。また、理学療法士が対象とすることが少ない統合失調症や摂食障害などの精神障害の患者さんも対象となります。患者さんが「したいこと」「する必要があること」などを理解する中で信頼関係を築き、目標に向けた回復の達成をよろこび、分かち合える職業です。
現場のいま
作業療法士の多くは、病院やリハビリテーションセンター、精神科病院などの医療機関で働いています。また、社会の高齢化に伴い高齢者・保健福祉施設や障がい者・障がい児福祉施設など、福祉分野からのニーズも高まっています。理学療法とは異なり、作業療法は食事を摂る、洗濯物を干すなどの日常生活活動や趣味活動、遊びなど、暮らしに密着した活動が多いため、「生活」そのものが活躍の場とも言えます。そのため、暮らしに関わるあらゆる分野からの期待が高まっています。
入学定員
40名
取得可能な資格・免許
- 作業療法士 国家試験受験資格
- 福祉住環境コーディネーター検定3級・2級
- メンタルヘルス・マネジメント検定Ⅲ種・Ⅱ種
- 認知症サポーター
作業療法学科の学びガイド
“その人らしい生き方”を支える作業療法士へ
患者さんが再び自分らしく日常生活を過ごせるようにリハビリテーションを行う専門家が、作業療法士。
患者さんが「したいこと」を理解する深い教養と、その実現を支える確かな技術・観察力・思考力を実践重視の学びで養います。
患者さんを直接授業に招いて行う「体験型授業」を導入。
本学科では臨床(現場)経験豊富な教員のネットワークを生かし、さまざまな症状の方をゲストスピーカーとして大学へお招きして、講義にご協力いただく「体験型授業」を導入。学生にとって、現場にふれることのできる貴重な時間を設けています。また、授業の一環として福祉施設や患者会※に学生を帯同させる取り組みも行っています。
※患者会:同じ病気や障がい・症状など、何らかの共通する患者体験を持つ人たちの集まり
過去のゲストスピーカー
CASE 1 呼吸困難で「人工呼吸器」をつけられた方
実際に「人工呼吸器」をつけた方に来ていただき、そのご苦労や求められるケアについてお話しいただきました。教科書や資料ではわからない「リアルな経験談」が学びにつながります。
CASE 2 認知症の方
ご本人に直接本学までお越しいただくことが難しいケースでは、WEBカメラとインターネットを駆使して、ケアが行われている現場と学生をつなぎます。臨場感あふれる、臨床の最前線で働く方の体験やノウハウを伺うことができます。
CASE 3 身体の一部に麻痺がある方
実際に麻痺がある方でなければ分からないような、日常生活での不便や不自由な点を直接聴くことで、作業療法士として自分たちが支援できることを考えます。また、模擬的に麻痺を体験できる装具を付け、“自分の経験”としても学んでいきます。
多彩な「体験型授業」を実施できる理由
各領域に臨床経験豊富な教員が在籍。現場とのつながりが強く、協力体制を構築していることで、さまざまな体験型授業を実現しています。
[教員の専門領域一例]
神経・筋難病系領域小林 貴代(教授)
ALS、パーキンソン病などの神経難病領域が専門。
高齢期障害領域松下 太(教授)
認知症などの老年作業療法学が専門。
小児・発達障害領域伊藤 直子(教授)
子どもと発達障害、重度心身障がい児に関する作業療法が専門。
医療系総合大学だからできる、他学科と連携した学び。
作業療法士は、あらゆる診療科目の患者さんに関わる可能性があるため、本学では、多学科が揃う環境だからこそできる学科を超えた学びを進めています。
連携例
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医療機器のプロフェッショナルである「臨床工学技士」の教員から、作業療法士も携わる医療機器について、操作方法や使用上のポイントなどを教わります。
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義手や義足などの構造・取り扱いについて、理学療法学科の教員による講義を受け、理解を深めます。また「総合リハビリテーションIPW演習」などの科目でも理学療法学科と連携して授業を行っています。
エイジレスセンターで、今、求められている自助具や福祉用具について学ぶ。
本学に隣接している「ATCエイジレスセンター」は、日本最大規模で展開する介護・福祉・健康関連の常設展示場です。学生は授業の一環として訪れ、フロアスタッフからリハビリ訓練用具や住宅設備、セラピーロボットなどの説明を受けることで、自助具や福祉用具の進歩や、今求められているニーズなどを学ぶことができます。
臨床力を鍛えるOSCE(オスキー)(客観的臨床能力試験)を導入。
- OSCE(オスキー)とは?
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Objective Structured Clinical Examinationとは、「客観的臨床能力試験」のことであり、主に医学部などの学生が臨床実習前に合格することが必須となっている学内試験です。
作業療法学科として導入している大学が少ない中、本学科では導入し、実習前に実習生としてふさわしい技能・知識・対話力(=臨床力)がそなわっていることを確認しています。
【OSCEの流れ】
■ 1年次
日常生活における一連の動作の確認とそのリハビリテーションを、教員を患者役としたロールプレイング(学生が作業療法士としてリハビリテーションを行う)を中心としたOSCEを実施します。
■ 2・3年次
障がいのある方、例えば脳卒中で身体に麻痺がある方にご協力いただき、実際の「評価※」を中心としたOSCEを実施します。
※評価とは検査や測定の結果をもとに、「問題点を把握し、目標を設定し、治療プログラムを立案する」ことを指しています
- 問診・観察
- 予測・評価計画
- 評価
- プログラム実施
MORINOMIYA + PLUS INFO
あらゆる活動がリハビリに。
本学科が関わるユニークな活動。
01.陶芸
本学のすぐ近くにある、本格的な陶芸ができる施設「舞洲陶芸館」で、学生が陶芸を学びます。陶芸は手や指を複雑に動かす動作がリハビリ(作業療法)としても活用されており、自分で体験してみることで、患者さんに教える際にも役立てます。
02.ダンス(ニューロダンス)
「踊る」リハビリテーションとして、本学科の橋本教授による「ニューロダンス」を授業としても取り入れています。また、ゼミの研究では、学生が考案したダンスのリハビリ効果を検証するなどしています。

03.マラソン(RUN伴)
認知症の方と地域をつなぐ日本縦断イベント「RUN伴」。例年このイベントに本学も加わり、本学科の松下ゼミの学生が中心となり、「チーム森ノ宮医療大学」として出場しています。

「チーム医療の森ノ宮」 だから身につく! “多職種理解”と“コミュニケーション力”。
チーム医療における、作業療法士の役割とは
急性期、回復期、維持期と、あらゆる状況の患者さんの支援にあたるため、関わるチームもさまざまです。医師や看護師、またリハビリテーションに関わる理学療法士や言語聴覚士などの職種とは特に深く連携します。活躍の場は病院や介護施設だけに留まらないため、社会福祉士や介護ヘルパーとチームを組むこともあります。

学科長 MESSAGE
「人への興味」×「遊び心と柔軟な発想」で、
生きる喜びをともに感じる作業療法士へ。
少子高齢化が進む日本では、既存の医療・介護サービスだけでなく、地域で暮らす障がい児・者や高齢者を支える体制が整えられつつあります。そしてその変化に伴い、作業療法士の役割も拡大しています。医療中心の作業療法だけでなく、その人らしい生活をサポートすることや介護予防、重度の障がい者支援や終末期におけるQOL(生活の質)の向上、といった場面において活躍する機会が増えています。作業療法士にはリハビリテーションの専門家としての技術面はもとより、患者さん一人ひとりの個性に合わせて、その人の生きる喜びを取り戻すオーダーメイドのケアを実践できる「総合力」が求められるようになりました。まずは人に興味を持ち、その仕草や表情から心を洞察する力を養うことからはじめてほしいと考えています。また、本学では実際の現場を感じられるよう、さまざまな症状のある当事者をお招きしてお話を伺うなど、体験的に身につける授業を取り入れています。病気や障がいだけでなく「人」を学び、遊び心や柔軟な発想で、楽しい作業療法を提供できる医療人になってほしいと思います。

松下 太 学科長・教授
Futoshi Matsushita
作業療法士、社会福祉士、博士(医学)。1990~若草第二竜間病院(現 わかくさ竜間リハビリテーション病院)、1994~東大阪市立老人保健施設四条の家勤務、2001~四條畷学園短期大学講師、2005~四條畷学園大学講師、2009~同准教授、2016~森ノ宮医療大学教授、2022~現職。日本作業療法士協会代議員、大阪府作業療法士会副会長。
[研究領域]認知症を中心とした高齢者の作業療法