RESEARCH ACTIVITY

研究活動 RESEARCH ACTIVITY REPORT

学術論文

増山 祥子先生

鍼灸学科
増山 祥子先生

Trends and quality of randomized controlled trials on acupuncture conducted in Japan by decade from the 1960s to the 2010s: a systematic review.

(日本で実施された鍼のランダム化比較試験の年代別傾向と質:システマティック・レビュー)

著者: Masuyama S, Yamashita H.
掲載誌:BMC Complement Med Ther. 2023 Mar; 23(1): 91.
Weblink:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36973783/

日本で患者を対象として実施された鍼のランダム化比較試験(RCT)論文108編について、年代別の傾向および方法論的質の評価を行いました。1970年代までの筆頭著者はすべて開業鍼灸師でしたが、2000年代以降は教育機関所属の鍼灸師/学生が約8割を占めています。対照群の設定は、1990年以前は異なる鍼手法が、2000年代には偽鍼・偽経穴が多く、2010年代には両者がほぼ同数でそれぞれ3分の1を占めていました。バイアスリスク評価では、「ランダム配列の生成」のみ1990年代以降に改善、「評価者の盲検化」については2000年代以降にやや改善していました。今後の鍼のRCTは、今回のシステマティック・レビューの結果を踏まえて計画・実行する必要があると考えています。

竹下 ひかり先生

臨床検査学科
竹下 ひかり先生

Is the anti-aging effect of ACE2 due to its role in the renin-angiotensin system?-Findings from a comparison of the aging phenotypes of ACE2- deficient, Tsukuba hypertensive, and Mas- deficient mice.

(アンジオテンシン変換酵素2(ACE2)の抗老化作用はレニン-アンジオテンシン系における生理機能によるか?-ACE2欠損マウス、つくば高血圧マウス、Mas欠損マウスの老化表現型の比較から得られた知見から考察する)

著 者:Takeshita H, Yamamoto K, Mogi M, Nozato S, Rakugi H.
掲載誌:Hypertens Res. 2023; 46(5): 1210-1220.
Weblink:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36788301/

循環調節系であるレニン-アンジオテンシン系(Renin-Angiotensin system, RAS)は、アンジオテンシン変換酵素(ACE)-アンジオテンシンII(AII)-AT1軸と、この軸に拮抗的な役割を果たすアンジオテンシン変換酵素2(ACE2)-アンジオテンシン1-7(A1-7)-Mas軸の二つの軸から構成されています。これらのうち、ACE-AII-AT1軸の過剰な活性化が老化を促進することは、すでに多くの臨床研究や基礎研究で示されており、このことから、ACE2-A1-7-Mas軸には抗老化機能があると考えられていましたが、この仮説を支持する十分な知見はありませんでした。
一方、我々は以前より、ACE2-A1-7-Mas軸を構成する分子の一つであるACE2の生理機能について研究を行ってきました。このACE2はRASにおける生理機能に加え、腸管でのアミノ酸吸収を制御する分子として知られており、また最近ではSARS-CoV-2の受容体としても注目されている多機能分子です。我々は、ACE2の全身欠損マウスと、A1-7の受容体であるMasの全身欠損マウス、さらにAIIの慢性過剰産生モデルであるつくば高血圧マウスを用いて、ACE2に抗加齢機能があるかどうか、またその機序がRAS依存的であるかどうかを検討しました。
本総説においては、我々の一連の研究から得られた知見に基づいて、ACE2の抗老化機能について考察を行いました。

久木元 由紀子先生

看護学科
久木元 由紀子先生

Impact of Palliative and End of Life Care Interprofessional Education for Pre-licensure Healthcare Students: An Integrated Review.

(医療系学生に対する緩和/終末期ケアに関する多職種連携教育の効果:インテグレィテッドレビュー)

著者: Kukimoto Y, Maeda K, Yasui N, Nakamura M.
掲載誌:Am J Hosp Palliat Care. 2023 Feb; 40(2): 202-215.
Weblink:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35711094/

高齢化社会の加速や重症化疾患の増加などにより多死社会を迎え、緩和ケアがこれまで以上に必要とされています。医療系学生に対する緩和/終末期ケアに関する多職種連携教育のインテグレィテッドレビューを行いました。5つのデーターベースを検索し、2000~2019年に公表された15文献を選定しました。米国・カナダ・イギリスなどで研究は実施され、医師・看護師・薬剤師・理学/作業療法士・社会福祉士・チャプランなどの学生が参加し、シミュレーション、ロールプレイ、実習、症例カンファレンスなどの教育プログラムを受けていました。職種が異なった学生間においても緩和/終末期ケアを学ぶ効果がみられました(図1)。我が国においても医療従事者として死生観が育まれるプログラムの開発が今後、期待されます。

東 泰弘先生

作業療法学科
東 泰弘先生

Neurobehavioral Impairment Scale of the A-ONE J: Rasch analysis and concurrent validation.

(A-ONE Jの神経行動学的障害尺度の妥当性検証:Rasch分析と併存的妥当性)

著者:Higashi Y, Takabatake S, Matsubara A, Nishikawa K, Kaneda T, Nakaoka K, Somei Y, Árnadóttir G.
掲載紙:Asian Journal of Occupational Therapy. 2023 Feb; 19(1): 30-37.
Weblink:https://doi.org/10.11596/asiajot.19.30

アイスランド作業療法士Guðrún Árnadóttir氏は、認知機能障害と生活障害を関連付けて分析する観察評価法A-ONEを開発しました。私たちのグループは、開発者のGuðrún Árnadóttir氏と共同で日本の文化に合った日本版A-ONE(A-ONE J)を開発し、この評価法の神経行動学的障害尺度が日本で有効に使用できるかを検証しました。その結果、脳卒中の方が生活に困っておられる原因となる機能障害を定量的に測定できることが可能となりました。これからも脳卒中など様々な障害により日常生活が困難になっておられる方の支援がエビデンスに基づき可能になるように微力ながら研究を進めて参りたいと考えております。

仲本 正美先生

理学療法学科
仲本 正美先生

Validity and Reliability of Criteria for Plantar Sensation Assessment Using Semmes–Weinstein Monofilament as a Clinically Usable Index.

(Semmes-Weinsteinモノフィラメントを臨床応用できる指標として用いた足底感覚評価基準の妥当性と信頼性)

著者:Nakamoto M, Ideguchi N, Iwata S, Tomita S, Morimoto N, Fukuda S, Kudo S.
掲載誌:Int J Environ Res Public Health. 2022 Oct; 19(21): 14092.
Weblink:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36360967/

立位や歩行には足の裏の感覚が重要になります。しかし、足底感覚の評価は難しく、評価部位や方法は確立していませんでした。そこで本研究では、手の感覚評価のために開発されたSemmes-Weinstein モノフィラメント(下図)を用いて、簡単な足底感覚の評価手順を検証しました。87人の若年者を対象に実施した結果、短時間で正確な評価ができる方法を開発することができました。今後、この評価手順を臨床で活用し、足の裏の感覚を改善するリハビリテーションに役立てていきたいと思います。

澤田 優子先生

理学療法学科
澤田 優子先生

Evaluation of the social skills of low birthweight infants using the Interaction Rating Scale.

(「かかわり指標」を用いた低出生体重児の社会能力評価)

著者:Sawada Y, Honda N, Narumiya M, Mizumoto H.
掲載誌:J Phys Ther Sci. 2022 Oct; 34(10): 697-703.
Weblink:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36213188/

低出生体重児(2500g未満)は生まれた時から新生児集中治療室(NICU)で治療を受けながら育ちます。低出生体重児は、退院後の長期的な発達の問題が指摘されていますが、発達の問題の早時発見と支援が困難でした。本研究では、「かかわり指標」を用いて低出生体重児と大人とのやりとりを評価し、低出生体重児の発達の特徴と人とのやりとりの困難性が早い時点で検証できるかを検討しました。その結果、一般の検査では3歳ごろに問題が指摘されるのですが、「かかわり指標」では1歳半の時点で問題を指摘することができることがわかりました。
今後は、早期からの支援プログラムを開発、検証していきます。

山本 浩一先生

診療放射線学科
山本 浩一先生

Effects of Rikkunshi-To, a Japanese kampo medicine, on donepezilinduced gastrointestinal side effects in mice.

(アルツハイマー治療薬ドネペジルが誘発する消化器副作用に対する漢方薬「六君子湯」の治療効果)

著者:Yamamoto K, Sato Y, Hagihara K, Kirikihira K, Jotaki A, Michihara A, Miyake Y.
掲載誌:J Phamacol Sci. 2022 Oct; 150(2): 123-133.
Weblink:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36055750/

高齢化により認知症は増加の一途をたどり、2050年に1,000万人を超えると予想されています。認知症は生命への危険性は少ないですが、要介護状態になり日常生活に大きな支障をきたします。認知症治療薬として我が国ではドネペジルが用いられますが、この薬物を長期継続使用しますと消化器症状(食欲不振、悪心・嘔吐)が頻発するので使用を断念することも多く、症状改善に繋がっていません。今回、我々はドネペジルが誘発する消化器症状は消化管運動障害によって生じることを明らかにし、さらに食欲不振の治療に頻用される漢方薬「六君子湯」が消化管運動機能を改善し、消化器症状を予防することを動物実験(マウス)により確認しました。

北川 崇研究員

MINCL
北川 崇研究員

Inhibitory effect of low‑intensity pulsed ultrasound on the fibrosis of the infrapatellar fat pad through the regulation of HIF‑1α in a carrageenan‑induced knee osteoarthritis rat model.

(カラゲニン誘発性変形性膝関節症モデルラットにおける低出力超音波パルスのHIF-1α制御を介した膝蓋下脂肪体の線維化抑制効果)

著者:Kitagawa T, Kawahata H, Aoki M, Kudo S.
掲載誌:Biomed Rep. 2022 Aug; 17(4): 79.
Weblink:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36158318/

変形性膝関節症では、関節周囲の滑膜や脂肪(膝蓋下脂肪体)が硬くなり、これを線維化と呼びます。このような組織の変化は、痛みを感じやすくするだけでなく、変形性膝関節症が重症度と関連することが知られています。近年、組織の“低酸素状態”つまり、酸欠状態になると、線維化が引き起こされることが明らかとなってきました。私たちは、低酸素状態を改善する低出力超音波パルス療法を用いて酸欠状態を改善することで、変形性膝関節症で生じる線維化を軽減できるのではないかと仮説をたてて実験を行いました。
今回の研究によって、変形性膝関節症の膝蓋下脂肪体は酸欠状態を改善することで、線維化を予防できることがわかりました。

関根 将先生

臨床検査学科
関根 将先生

Pre-graduate teaching of human parasitology for medical laboratory technologist programs in Japan.

(日本の臨床検査技師養成校における寄生虫学教育の現状について)

著者:Sekine S.
掲載誌:Humanit Soc Sci Commun. 2022 Jul; 9(1): 225.
受賞:森ノ宮医療大学 第6回 学長賞(優秀論文賞)
Weblink:https://www.nature.com/articles/s41599-022-01246-w

日本国内で寄生虫に感染することは稀なことですが、海外からの輸入例を無視することはできません。医学部医学科では寄生虫学教育に充てられる時間が減少していることが示されていますが、臨床検査技師教育における現状は不明でした。そのため本研究では臨床検査技師養成校にアンケート調査を行い、その結果を解析しました。
その結果、1994年時点では最短でも3120分間の寄生虫学教育が行われていたにも関わらず、現在では平均で1136分にまで減少していること、いくつかの養成校では実際に寄生虫 (卵) を観察する実習が行われていないことが明らかになりました。

河西 謙吾客員研究員

MINCL
河西 謙吾客員研究員

Relationship between Tissue Gliding of the Lateral Thigh and Gait Parameters after Trochanteric Fractures.

(大腿骨転子部骨折後の大腿外側部における組織間の滑走性と歩行パラメーターの関係)

著者:Kawanishi K, Fukuda D, Niwa H, Okuno T, Miyashita T, Kitagawa T, Kudo S.
掲載誌:Sensors (Basel). 2022 May; 22(10): 3842.
Weblink:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35632253/

大腿骨転子部骨折は高齢者が多く受傷する疾患で、歩行時の荷重する時に痛みが生じることで日常生活に支障をきたします。我々は、痛みが生じる要因の一つに滑走性が関連することを明らかにしてきました。今回は歩行中の荷重量と滑走性の関係を調査しましたが、一般的な病院の環境では歩行中の荷重量を数値化して評価する機器がありません。そのため、持ち運びが可能な加速度センサーを用い、工学系の分野で用いられることの多いジャークと呼ばれる加速度を時間微分した値を用いて歩行を解析しました。その結果、歩行中のジャークは滑走性と関連することが明らかとなりました。この結果は、臨床応用が可能な歩行解析の一つとして、また大腿骨転子部骨折後の歩行中の問題を明らかにした内容として専門国際誌に掲載されました。

岩佐 由美先生

看護学科
岩佐 由美先生

Home Health Nursing Care Time for Patients with Parkinson’s Disease.

(パーキンソン病患者に対する訪問看護ケア時間の分析)

著者:Iwasa Y, Suzuki M, Saito I.
掲載誌:Journal of Personalized Medicine. 2022 Apr; 12(5): 714.
Weblink:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35629137/

訪問看護師がパーキンソン病患者さんを訪問する際に同行し、許可をとって看護ケアを撮影記録しました。訪問の時間は高齢の患者さんで長い傾向がありました。看護ケアで分けると、日常生活援助(76.0%)、医療ケア(10.1%)、記録と管理(14.0%)に費やされていました。ケアの時間は日常生活援助でばらつきが多く、特に安楽 (マッサージ)、相談指導、排泄のケアで患者さんによる差がありました。このように、どんな患者さんの、どんなケアに、どのように時間が費やされているか可視化することは、看護を標準化し多職種と連携していく上で重要だと考えて研究しています。

堤 真大先生

MINCL
運動療法エビデンス研究チーム
堤 真大先生

In vivo magnetic resonance imaging study of the hip joint capsule in the flexion abduction external rotation position.

(FABER testテスト肢位の解剖学的特徴)

著者:Tsutsumi M, Yamaguchi I, Nimura A, Utsunomiya H, Akita K, Kudo S.
掲載誌:Sci R ep. 2022 Apr; 12(1): 6656.
Weblink:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35459931/
https://rdcu.be/dgrao
研究紹介動画:https://www.youtube.com/watch?v=E_6NHwjY9us

股関節前面痛はスポーツ現場において比較的ありふれた臨床症状です。FABERテスト(Patrickテスト)はその評価を行う疼痛誘発テストとして有用とされますが、そのテスト肢位が解剖学的に何を評価しているのか、生体内では十分に明らかになっていませんでした。本研究では、若年健常者において、FABERテストを行う姿勢でMRIを撮像し、そのテスト肢位では①股関節包が緩む②関節包周囲筋と前方関節包が動いた結果、間にはさまれた脂肪・疎性結合組織の領域が広がる、ということを示しました。
FABERテストが陽性の場合、股関節包とその前面の脂肪・疎性結合組織についての評価も詳細に行う必要性があることを示唆する研究となりました。

学会発表

関根 将先生

臨床検査学科
関根 将先生

Exploring the Causes of the Relapse of Plasmodium vivax on the Aneityum Island, Vanuatu.

(バヌアツのアネイチュム島における三日熱マラリア再発の原因を探る)

発表者:Sho Sekine, Chim Wai Chan, Wataru Kagaya, Morris Kalkoa, George Taleo, Sam Iamar, Harry Iata, Akira Kaneko.
学会名:The 92th Annual Meeting of the Japanese Society of Parasitology. Kanazawa. 2023.
開催日:2023年3月30日~31日

三日熱マラリア原虫は肝臓内に潜伏することが可能なため、治療後にも再発する可能性があることが問題となっています。バヌアツのアネイチュム島において全島民を対象とした治療を実施しました。その結果、マラリアは撲滅されたように思われましたが、数年後にアウトブレイクが発生してしまいました。
本研究ではこのアウトブレイクの原因を探るためにマイクロサテライトマーカーを用い、集団遺伝学的な解析を行いました。その結果、肝臓内に潜伏していた原虫ではなく、外部から新たに持ち込まれた原虫が原因である可能性が示されました。この結果は、マラリア撲滅後の再発予防策を考案する上で、輸入感染に特に注意が必要となることを示唆します。

堤 真大先生

MINCL
運動療法エビデンス研究チーム
堤 真大先生

長趾屈筋と載距突起の解剖学的関係に基づく距踵舟関節の安定化機構.

発表者:堤 真大, 工藤 慎太郎, 二村 昭元, 秋田 恵一.
学会名:第128回日本解剖学会総会・全国学術集会. 仙台(一般口演)
開催日:2023年3月18日

従来、足のアーチは足部の筋や靭帯(特にスプリング靭帯)、そして後脛骨筋という下腿の筋によって支えられていると考えられてきました。一方で、後脛骨筋と同じく下腿の筋でありながら、長趾屈筋は載距突起(“かかと”の骨の一部)に対する走行が曖昧に理解され、足のアーチに対する作用はよくわかっていませんでした。
本研究では、その走行を明らかにすることで、長趾屈筋が載距突起を内下方から支え、足のアーチを支えうることを示唆しました。また、いわゆるスプリング靭帯は長趾屈筋腱・後脛骨筋腱の腱鞘を成した足部関節包の一部であったため、長趾屈筋や後脛骨筋と協調して足のアーチを支える動的な構造であることが示唆されました。
なお、本発表の一部は論文としても掲載されています。
Tsutsumi et al., Sci Rep 2022; https://rdcu.be/dgCcq

加納 寛也先生

臨床工学科
加納 寛也先生

大動脈手術時の体外循環における脳脊髄保護について

発表者:加納 寛也
学会名:第47回 日本体外循環技術医学会大会. 福岡.
開催日:2022年11月19日~20日

大動脈にコブ(大動脈瘤)や大動脈が避けた(大動脈解離)場合、その血管を手術で修復するために患者さんと医療機器を接続し体外に血液を取り出し循環(一時的に人工心肺装置という生命維持管理装置)させます。その際に脳や脊髄に障害がでないように体外循環を管理する必要があります。その手術を理解し、医師とタイミングを併せ管理することで臓器に対する安全性が大きく変わります。その管理方法をまとめ、主流な方法から最先端な方法までを総括しました。また、手術中におけるピットフォールをまとめより安全に手術ができる一助となる報告発表しました。

工藤 慎太郎先生

MINCL
運動療法エビデンス研究チーム
工藤 慎太郎先生

Imaging of the Chronic Ankle Instability.
慢性足関節不安定症の画像評価

発表者:Kudo S.
学会名:9th International Ankle Symposium. Osaka, Japan. 2022. (web congress) (Symposium)
開催日:2022年10月29日

足関節の捻挫が癖になるというのは耳にしたことがある方も多いのではないでしょうか?この捻挫が癖になり、頻繁にガクッと挫く(くじく)状態が続き、痛みが慢性化します。このような状態を慢性足関節不安定症(CAI)と呼びます。足首の関節は主に距腿関節と距骨下関節という2つの関節からなります。従来、足関節の捻挫では距腿関節の動きを制動する前距腓靭帯が損傷するため、この靱帯の画像評価が行われてきました。近年では、距腿関節のみではなく、距骨下関節の損傷もあると考えられており、この関節をどう評価するかが話題となっています。そこで、今回のシンポジウムでは、私たちが行っている超音波検査により、距骨下関節を評価できることを示した研究を紹介しました。

山畑 飛鳥先生

診療放射線学科
山畑 飛鳥先生

視線情報を用いた診療放射線技師養成教育における胸部立位X線撮影手技指導項目の検討

発表者:山畑 飛鳥, 今井 信也, 船橋 正夫, 垣本 晃宏, 大西 英雄.
学会名:第50回日本放射線技術学会秋季学術大会. 東京. 2022.
開催日:2022年10月7日~9日(ハイブリッド開催)

本学をはじめとする診療放射線技師養成校は学生に対しX線撮影を学ぶための実習を展開しています。我々教員はこれまでの臨床経験や専門書から撮影方法や患者さんへの接遇方法を検討し、学生に指導していますが、国内には具体的指導方針やガイドラインなどは存在せず指導内容の臨床的妥当性について改めて評価する必要があると考えました。そこで我々は独自に作成した胸部X線撮影実習用の指導項目(以下、検証モデル)の臨床的妥当性を検証するため、経験や背景の異なる複数の熟練診療放射線技師(以下、熟練者)が胸部撮影を行った際の視線情報を用い、熟練者の撮影手技が検証モデルをどの程度網羅するかを評価しました。その結果、熟練者の撮影手技は検証モデルの8割以上を網羅し、残りの2割は熟練者の業務背景が影響し実施されなかったものの学生指導に不可欠な内容であることが明らかとなりました。今後我々は作成した検証モデルを臨床的妥当性が担保された教育モデルとして用い学生教育につなげることができると考えます。

木内 隆裕先生

理学療法学科
木内 隆裕先生

ミラーセラピーにおける課題難易度とその効果

発表者:木内 隆裕, 藤田 祐希, 長尾 彬生, 川野 未来, 丸山 香.
学会名:第27回日本基礎理学療法学会学術大会. 大阪. 2022.
開催日:2022年10月1日~2日(ハイブリッド開催)

ミラーセラピーとは、文字どおり鏡を使ったリハビリテーション治療です。下図のように、「思い通りに動かせる側」の手足の鏡像が「動かしにくい側」の手足に重なるように鏡を置き、その鏡像を見ながら運動を行うことで「動かしにくい側」の手足の機能を高めようとするものです。すでに多くの研究が報告されており、脳卒中後の運動障害などに有効であることが示されています。しかし、その方法論はまだ不十分です。
今回の研究は、先行研究の間で結果が一致していない運動課題に着目し、健常若年者を対象として、課題難易度の違いがミラーセラピーの効果に影響する可能性を検証したものです。その結果、予想とは異なり、課題難易度は方法論的に重要ではないことが示された他、相反する先行研究のうち片方の結果のみが支持されました。現在、そのような結果が得られた要因を調べる研究を進めています。

小川 泰弘先生

作業療法学科
小川 泰弘先生

統合失調症の病識と心理防衛的傾向,神経認知機能
―病識は抑うつや心理的苦痛へとつながるか?―

発表者:小川 泰弘, 早川 智美, 浦川 瑞生, 福原 啓太, 西川 隆.
学会名:第56回日本作業療法学会. 京都. 2022.
開催日:2022年9月16日~18日(ハイブリッド開催)

この研究では、統合失調症をもつ方を対象として、自分の精神疾患に対する認識(病識)が心理面とどのように関連しているかを調査しました。その結果、「病識」が高い人ほど未熟な防衛(未熟で弱い自分の不満や不安に対処するための防衛)を示すことが明らかになりました。また、「病識」の高いひとほど抑うつや心理的苦痛を感じていることが明らかになりました(図1)。これまで精神疾患における「病識」は前頭葉機能の問題として捉えられていましたが、この研究では「病識」を心理的な視点で捉えることの重要性を主張しています(図2)。

笹井 佐和子先生

看護学科
笹井 佐和子先生

Relationship between premenstrual syndrome status and food intake among women in Japan.

(日本人女性における月経前症状と食事摂取量との関連)

発表者:Sasai S, Matsushima Y, Matsuyama H, Osawa M, Uiji S, Nakamoto I, Ajiki S, Nishikawa M, Ogawa S, Wakamura T.
学会名:International congress of Physiological Anthropology 2022. Oregon USA.
開催日:2022年9月15日~17日(一部オンデマンド配信)

女性は月経前に心身の不調を実感し、日常生活に支障をきたすことがあります。どのような生活習慣が月経前症状と関連するのかを明らかにするために、日本在住の20-40歳代女性(906人)を対象にアンケート調査を実施しました。過去3ヶ月の月経前症状と普段の食事量(食事バランスガイド:農林水産省)の関連について分析を行いました。その結果、ご飯やパンなどの「主食量」の少なさと月経前のむくみなどの症状である「水分貯留」に有意な関連が見られました。この結果より、適切な主食量の摂取が月経前症状の緩和と関連する可能性が示唆されました。

山岡 直子先生

看護学科
山岡 直子先生

先天性心疾患をもつ子どもが初めて退院するまでに小児病棟の看護師が抱く母親の気になる様子

発表者:山岡 直子
学会名:日本小児看護学会 第32回学術集会. 福岡. 2022.
開催日:2022年7月9日~10日(一部オンデマンド配信)

先天性心疾患をもつ子どもは、生まれた直後から検査や治療のため入院を継続することがあり、母親は生活や育児への不安や困難感が多いといわれています。母親が支援を受けることができず、生活や育児が困難な状況に陥ることは、子どもにとって不適切な養育の状況につながるおそれがあります。また、不適切な養育の予防は、看護師が「気になる母親」に気づくことからはじまるといわれています。
看護師にインタビューをした結果、「母親の気になる様子」には、子どもの病状に対応できるかという視点と、子どもに関心をもち育てることができるかという視点があることがわかりました。看護師の「母親の気になる様子」の気づきから母親にかかわり、なぜ子どもに関心を示さないのかを具体化していくことが、先天性心疾患をもつ子どもの母親への支援につながるのではないかと考えました。
今後も、看護師だからこそできる『子育て支援』を明らかにしていきたいと考えています。

藤江 建朗先生

臨床工学科
藤江 建朗先生

心臓自律神経系活動の時系列データによる睡眠効率推定

発表者:藤江建朗, 玉元由果莉, 中村英夫.
学会名:第61回日本生体医工学会大会2022. 新潟.
開催日:2022年6月28日~30日

本研究の目的は、健康管理のための簡易な睡眠管理法の開発として、睡眠の質を評価するために用いられる睡眠効率を心臓自律神経系活動の指標から推定できるか検討することです。若年男性20名を対象に夜間睡眠ポリグラフ検査を実施し睡眠効率を算出し、心電図から心拍数とエントロピーという自律神経系活動の総体を表している指標を算出しました。これらの指標を時系列にプロットし傾きを求め(図1)、縦軸を睡眠効率、横軸を各指標の傾きとした散布図を作成し、相関係数を求め検討しました。結果として、エントロピーで0.7を超える強い相関関係が確認され(図2)、エントロピーの時系列データの傾きから睡眠効率を推定できる可能性が示唆されました。今後は、心臓自律神経系活動の指標を増やし推定の可能性について検討を進めていきたいと考えています。

川畑 浩久先生

臨床検査学科
川畑 浩久先生

変形性膝関節症における膝蓋下脂肪体の線維化と低出力超音波パルスのあたえる影響

発表者:川畑 浩久, 北川 崇, 工藤 慎太郎, 青木 元邦
学会名:第22回日本抗加齢医学会総会. 大阪. 2022.
開催日:2022年6月17日~19日

膝蓋下脂肪体(IFP)は、膝関節の前方に位置し、円滑な関節運動を行うために重要な組織のひとつです。また変形性膝関節症(膝OA)においては、IFPの炎症や線維化が疼痛や機能障害をもたらすことが指摘されています。そこで私たちは骨折治療などで使われる低出力超音波パルス(LIPUS)をもちいてIFPの線維化を抑制できないかと考え検討しました。その結果、LIPUSは炎症により誘導されるHIF-1αという分子の発現や活性を抑制し、線維化を軽減させることを見出しました。この結果は膝OAに対する理学療法の新たな展開を期待させることから、第22回日本抗加齢医学会において報告いたしました。

仲村 正子先生

鍼灸学科
仲村 正子先生

吉村式擦過鍼が姿勢バランス機能に及ぼす影響について

発表者:仲村 正子, 袖垣 未空, 中根 征也.
学会名:第71回(公社)全日本鍼灸学会学術大会東京大会. 2022.
開催日:2022年6月3日~5日(ハイブリッド開催)

擦過鍼は、近年介護予防分野で注目されています。中でも吉村式擦過鍼は、アルミ製で長さ5㎝のヘラ状の擦過鍼と長さ7㎝の棒状の鍉鍼の2種類の鍼を使用し、四肢や体幹の経絡の流れに沿って擦過刺激を施す方法です。本研究は、擦過刺激によりバランス機能が向上し転倒防止に繋がっている可能性から発想を得て行いました。結果、擦過鍼を施さなかった群と比較し、擦過鍼を施した群の方が、バランス機能が有意に向上することがわかりました。今回は学生を対象としましたが、今後は高齢者を対象とし検討していきたいと考えています。
本研究は鍼灸学科の卒業研究として行われたものです。今後も学生と一緒に臨床的意義のある研究を継続したいと考えています。

吉村式擦過鍼で使用する2種類の鍼

今井 信也先生

診療放射線学科
今井 信也先生

Evaluation of factors associated with the effectiveness of radiation protection glasses.

(放射線防護メガネの有用性に関連する要因)

発表者:Imai S, Yamahata A, Kakimoto A, Kawaji Y, Gotanda T, Akagawa T.
学会名:6th European Congress on Radiation Protection. Budapest. 2022.
開催日:2022年5月30日~6月3日

放射線を用いた検査では、医師や医療スタッフに対する目の水晶体への被ばくを低減させる必要があり、最も身近な装備としては放射線防護メガネが有用とされています。放射線防護メガネには現在さまざまな種類のものがあり、その違いはレンズの大きさや鉛含有量などになります。
本研究では、10種類の放射線防護メガネの放射線防護率を測定し、それらから防護効果に関連する要因を検証しました。
その結果、レンズの大きさや鉛含有率は相関分析により、放射線防護効果に多大に寄与していることが明らかとなりました。

角田 晃啓先生

理学療法学科
角田 晃啓先生

血糖降下を目的とした運動療法の効果は聴取する音楽の種類により変動するか

発表者:角田晃啓, 岩下美月.
学会名:第65回日本糖尿病学会年次学術集会. 兵庫. 2022.
開催日:2022年5月12日~14日(ハイブリッド開催)

糖尿病を有する方にとって、ウォーキングなどの有酸素運動は血糖値を下げる効果(=血糖降下作用)がある重要な治療の1つですが、運動を行うことで逆に血糖値が上がってしまうこともあります。今回、運動により血糖値が上昇するメカニズムの1つに自律神経が関与していると仮定し、気分のあがる音楽を聴きながら運動した際の血糖降下作用について検討しました。
気分のあがる音楽は交感神経活動を活性化させるため、血糖降下作用を減弱させるかもしれないと仮説を立てていましたが、今回の研究では影響がみられませんでした。運動強度が一定であれば、音楽を聴きながら楽しんで運動しても血糖降下作用に影響はない可能性が示されました。

受賞

堤 真大先生

MINCL
運動療法エビデンス研究チーム
堤 真大先生

Top Downloaded Article 2021

学術誌:Clinical Anatomy
論文タイトル:Dynamic changes of the joint capsule in relation to the zona orbicularis: An anatomical study with possible implications for hip stability mechanism.
著者:Tsutsumi M, Nimura A, Utsunomiya H, Akita K.
受賞日:2023年3月31日
Weblink:https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/ca.23767

本受賞は、2021年1月から12月の間に「Clinical Anatomy」誌で公開された論文の中で、オンライン公開後の12か月の間で、最も多くダウンロードされた論文の上位に含まれたものに認定されるものです。
従来、関節の支持機構を考える上では“靭帯”が重要視されてきましたが、多くの関節において靭帯様の線維束は認められず、“靭帯”は“関節包”の一部にすぎないことがわかってきています。本論文は、股関節包内面に存在する輪状の線維束とされてきた輪帯に着目した研究です。一般には、単なる膜構造として認識されてきた関節包ですが、股関節の運動に伴って関節内腔へ突出する動態をみせ、この関節包の内腔への突出自体がいわゆる輪帯に相当することが明らかになりました。本研究を基に、“靭帯”ありきの股関節支持機構が見直され、外科手術・運動療法の発展につながることを期待しています。

信江 彩加先生

鍼灸学科
信江 彩加先生

若手研究奨励賞

学会名:第35回日本トレーニング科学会大会. 東京. 2022.
テーマ:スポーツテクノロジーの介入による陸上長距離パフォーマンス向上がもたらす形態的特徴の変化
発表者:信江 彩加, 佐野 加奈絵, 石川 昌紀.
受賞日:2022年12月4日

近年、陸上競技の長距離種目において、従来の薄底・軽量シューズに代わって、前への推進力が得やすくなる構造をしている厚底カーボンシューズが出現したことにより、記録の向上が見られる一方で、走り方や怪我の発生箇所も変化していることが分かってきています。
私たちの研究では、長距離走能力と関連のある下肢の筋腱の形態的特徴が、このシューズテクノロジーの進化に伴って変化している可能性を明らかにしました。つまり、新しいシューズの登場により、走行中の筋腱の負担部位が変わってきており、これに伴いトレーニング方法やケアのアプローチを見直す必要性と、その上で考慮すべき要素を示しました。

東 泰弘先生

作業療法学科
東 泰弘先生

第56回日本作業療法学会 優秀演題賞

学会名:第56回日本作業療法学会. 京都. 2022.
テーマ:車いすを使用している患者の新たなトイレ動作尺度のRasch分析を使用した構造的妥当性の検討
発表者:東 泰弘, 兼田 敏克, 堀本 拓究, 平山 公章, 染井 佑太.
受賞日:2022年9月18日
公表:http://ot56.umin.jp/item/excellent_presentation.pdf

トイレ動作の自立が困難である場合、Quality of Life、精神衛生および社会参加の低下を引き起こすことが報告されています。そこで、我々はトイレ動作を22の動作に分類し、6段階でそれぞれの動作を評点するトイレ動作尺度(Toileting Behavior Evaluation:TBE)を作成しました。今回の発表ではトイレ動作22動作のうち、どの動作が最も難しく、どの動作が最も簡単なのかをRasch分析という手法を用いて検討しました。その結果、「下衣の上げ下げ」が最も難しく、「便座で座位保持」が最も簡単であることがわかりました。この結果を用いることで目標設定や段階付けなどが行いやすくなると考えられます。

河西 謙吾研究員

MINCL
運動療法エビデンス研究チーム
河西 謙吾研究員

最優秀口演演題賞

学会名:第59回日本リハビリテーション医学会学術集会. 横浜.
テーマ:大腿骨転子部骨折後の大腿骨外側痛に対する弾性包帯を用いた大腿部への圧迫の効果
発表者:河西謙吾, 福田大輔, 丹羽裕之, 奥野泰介,宮下敏紀, 北川崇, 工藤慎太郎.
受賞日:2022年6月25日

本発表は高齢者の3大骨折とも言われる太ももの付け根の骨折(大腿転子部骨折)を対象としました。発生頻度も高く、骨折後は歩行時に痛みを訴える患者様が多く、難渋する疾患の一つです。我々は、大腿骨転子部骨折後の大腿部(皮下組織)が腫れ、滑走性が低下することで痛みが生じることを明らかにしてきました。その成果を基に簡便かつ非侵襲的な弾性包帯を用いて大腿部を圧迫することで滑走性や痛み、そして歩行が改善することを示しました。この発表は本学で修士・博士課程で続けてきた研究の集大成であり、リハビリテーション医学会というこの業界での一番大きな学会で賞を頂けたことを誇りに、目の前の患者様に還元できる研究を続けていきたいと考えております。

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2014年度 学術論文

過去の学会発表

2021年度 学会発表
2020年度 学会発表
2016年度 学会発表
2015年度 学会発表

過去の受賞

2021年度 受賞
2020年度 受賞
2018年度 受賞